ススキの広がる水門付近
この奈佐川、そして他にも沢山の小さな川が円山川へと注いでいる。私の村の進美寺川、浅倉の稲葉(いなんば)川、出石川・・・・・。普段は穏やかな表情で豊かな河川敷に青草を揺らせているこれらの川が、一度大雨や台風で暴れだすと悪魔のように襲い掛かってくるのだ。
川は生きている、とよく言葉に聞くけれど、水は本当に怖い。
何があろうと容赦なく隙間から進入し、絶対の法則で高いところから少しでも低いところへ全力で押し進む。山以外の場所は全部が川の続きであることを見せ付けられる。
あたり一面泥に埋まっても、秋になればやはりまたススキが群生し、やさしい振りをした顔を見せる。
そのススキの根元には何万もの虫が居て、死んでも死んでも生まれ続ける。
私は海を見ていると元気が出てくるのだが、川を見ていると、静かにゆっくりと何かを諦めてゆくような気持ちを持つ。
そのあきらめは時には慰めに似た気持ちを伴う。